[ 気分はもう革命★第7夜 :さくら漫才]
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頑丈な磔刑台に結わえ付けられたまま、メテオ姫は忘我の淵をさまよっていた。
女性の証の器官を根こそぎ掘り取られたうえ、わずかに残された性器の一部と、平坦
な乳房の尖端は過剰な量のホルモン剤によって肥大化させられ、そこに対する執拗な
責めが延々と行われている。
それによって強いられる身体反応と性愛神経への絶え間無い刺激によって、彼女の
意識の正常な部分はすでに崩壊していた。
また数時間におよぶ激しい拷問はわずか十二歳の肉体にはすでに限界に近い。
それでもなお身をよじりながらあさましく絶頂をねだる自分の喚きを、メテオ姫自
身はどこか遠くの出来事の様に感じていた。
いつの間に自分のすぐ傍に、暗いもやの様なものが澱んでいて、その奥の方で不定
形の何かがうごめいている。
興味を覚えたメテオ姫は、そちらに向かって一歩、踏み込んだ−−
国王は低くうめいて、愛娘のあらわな背中を撫でさすった。
8歳のメテオ姫が彼のものを口いっぱいにして、幼い舌が亀頭の鈴割
れを分けて潜り込む。ついにこらえきれずに肉棒を痙攣させて精を放
つと、ぐぶっという音とともにメテオ姫の小さな鼻腔から白濁した液
が流れ落ちる。
真紅のカーテンに囲まれた小部屋。
揺れる蝋燭の灯りに5歳のメテオ姫の影が大きく小さく揺れている。
「さあ姫様、もう一枚めくってごらんなさい」
宮廷道化師の声に促され、伏せて積まれているカードを表に開くと、
それにも彼女と同じ歳ごろの女の子が性交している絵が精密な描写で
描かれている。その女の子の表情は困っているようにも歓んでいるよ
うにも見え、メテオ姫は黒い瞳を大きく開いてそれを凝視している。
「...この娘はね、とても気持ちよがっているんです」
本当に?と訊ねるメテオ姫の髪をやさしく梳きながら、宮廷道化師は
生唾を飲み込む。
ふわふわ。ふわふわ。あたしはもらわれっこのひんみんのこ。
ひんみんはくものうえにすんでるから、あたしはそこからかあさまに
もらわれてきたのったらもらわれてきたの。
3歳のメテオ姫が、自室で遊んでいる。彼女が最近おぼえた人形遊び
よりも楽しいことは、隠れてする貧民ごっこだった。すっかり裸にな
ってベッドと壁の隙間で柔らかいクッションを両脚にぎゅっとはさみ
こんで身体を 揺らすのがたまらなく心地よい。
時間を忘れて熱中しているといきなりドアが開いて、一番上の兄が
こちらに近づいて来る。
草いきれと、強い日差しにくしゃみが出そうになった。
花を摘みに城を脱け出してきたのに、無残に散らされたのは彼女の方
だった。柔らかなドレスを引き裂かれて、固い乳房を節くれ立った掌
で乱暴に揉まれて喘ぐ美少女の幼い顔には、どこか見覚えがある。
メテオ姫はしばらく考えて、それが自分の母親の若い頃だと見当をつけた。
どうやら母親の記憶領域に踏み込んでしまったらしい。このまま行ってもその親
そのまた親と際限が無いし面白くも無い。
彼女は別の流れに向かった。
そこには様々な自分の人生があった。並行して流れるどの人生の自分も少しだけ、ま
たはかなり違う境遇なのだが、いずれも共通するのは十二歳で生命を終えている点で
ある。自殺、他殺、事故死、病死、腹下死...死死々々...。
これはいけないわったらいけないわ。なんだか甲斐がないじゃないのよ。
メテオ姫は顎に手を当てて思案した。
例えば十二年で強制的に終了してしまう手続きであったとしても、それが終了する直前に
別のルーティンに処理を引き継げばよいのではないだろうか?
そこで自分の身体が死を迎えても、その時点で別の個体に意識を乗りかえるというの
はどうか。
それに彼女が気付いた瞬間、並行する世界の幹に輝きとともに新しい枝が発生した。
得心の笑みを浮かべたメテオ姫は、その出発点を自らの方へ引き寄せる。
それが、彼女が次に送る人生なのだ。
十二歳のその日を迎えるまで、身代わりの例の娘にはせいぜいその肉体を大切に使っ
てもらおう。あのピンク色のふざけた髪はかなり気にくわないけど、まあ仕方ないわ
ねったら−−
「おどろいた。まだ笑えるのか」
メテオ姫が我に返ると、自分はまだ磔刑台に身体を晒していた。
左右の乳首とクリトリスを固く結んだ絹糸はぴんと張られたままであり、長時間に
渡って血流を止められたために壊死を起こしているようだ。
今なお大きく割られたままの股間には、失った器官の代わりに何を詰められたのだろう。
ごりごりという感触とともに下腹部をうごめく複数のなにかが小さな鋭い歯でどうやら
卵巣を食い荒らしているらしい。
「もう陽が落ちる...定めにより責めはこの時点で終了せねばならない」
裁定者の顔は、逆光の陰でよく表情が分からない。
秘術を尽くしてなお結果を引き出せなかった拷問官は、傍らでがっくりと肩を落して
しくしく泣いている。彼は初めての完璧な敗北に打ちのめされている。
抜刀した処刑官を従えた裁定者は、敬意を込めて彼女に語りかけた。
「誇り高き姫よ。最期に言い残すことはあるかね?」
すでに痛みを感じなくなった身体に少々のなごり惜しさを覚えながら、メテオ姫は
ささやいた。
「...いずれわたしは戻るぞ...この星を焼くために、な」
閃いた刀身に落日が反射し、次の瞬間メテオ姫は暗黒に包まれた。
(了)